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2021年4月19日

【PICK UP! LOCAL ACTION】#02 千駄ヶ谷のオンライン盆踊り大会

この連載は、渋谷区内のユニークな地域交流・地域活動を紹介していく企画です。渋谷には、おとなりサンデーの日だけにとどまらず、地域との関わりを持ちながら継続的に活動されている方がたくさんいます。そんな素晴らしい活動を、もっともっと多くの人に知ってもらいたい。そんな思いから、この連載が始まりました。

今回取材したのは、千駄ヶ谷を中心に、地域と人とをつなぐことをライフワークにされている岡崎千治さん。その活動のひとつに、千駄ヶ谷盆踊り大会の運営があります。昨年はなんと、初めてオンラインで開催。その試みの裏には、一体どのような思いがあったのでしょうか。さっそく、お話をうかがってみました!

「今年も、盆踊り大会の時期がやってくる」。

夏の風物詩と言えば、スイカ、風鈴、盆踊り。ここ千駄ヶ谷でも、毎年夏に、鳩森八幡神社にて盆踊り大会が開かれています。地域に長く住む人の話によれば、始まりはおそらく戦前から。最初は数名のみでおこなっていたものの、今では千駄ヶ谷の恒例行事となり、ここ数年は渋谷区内外から1日に3000人が来場するほどのにぎわいを見せていました。

しかし2020年。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、とても開催できるような状況ではなくなってしまいました。誰もが「今年は仕方がないよね」とあきらめかけていた一方で、神社には提灯が飾られ始めます。その様子を見た人たちが「今年もやるらしいよ」とうわさを立てたり、盆踊り大会に合わせて営業を再開するお店が増えたりと、お祭り前のワクワク、そわそわとした雰囲気のなか、自粛ムードだった街に少しずつ活気が戻り始めました。


(毎年披露してくださっている、踊り連・三睦会のみなさんの盆踊り)

2020年724日。お天気にも恵まれ、当日は神社から盆踊りが生中継されました。残念ながら皆で会場に集まって踊ることはできませんでしたが、遠方から参加した人たちが「懐かしい!」と盛り上がったり、なじみの音頭を見て聞いて画面越しにお祭り気分を味わったりと、例年とはちがう、新しい盆踊りの楽しみ方が生まれました。また、オペラ歌手の方による生演奏が始まると、その姿を一目見ようと周辺のマンションから顔を覗かせる人が続出。演奏後には大きな拍手が神社に鳴り響くなど、思わぬ盛り上がりを見せました。こうして千駄ヶ谷初のオンライン盆踊り大会は、大成功のなか幕を閉じたのでした。


(ブースからは、毎年恒例の抽選会の様子も中継。抽選券は地域の飲食店などで配布されました。)

千駄ヶ谷全体を、盛り上げたかった。

中止という選択もあったはずなのに、あえて開催することを選んだ岡崎さん。例年通り会場に集まって盆踊りはできなくても、ライブ配信ならできると、決してあきらめませんでした。それは、自粛ムードが漂っているこのタイミングで盆踊り大会を実施することが、この街の人びとを鼓舞することにつながるという思いがあったからです。


(盆踊り大会で締めくくりのあいさつをする、岡崎さん)

とくに、岡崎さんはずっと、長い間営業できなくて困っている店主の方々の存在が気掛かりでした。全員がそろそろお店を再開したいと思っているのに、ほとんどのお店が休業を続けていたために、単独で営業再開することに抵抗を感じている店主がたくさんいたのです。一歩踏み出せないもどかしさを肌で感じていた岡崎さんは、店主の背中を押せるような仕掛けをつくりたいと思いました。そのひとつが、抽選会。お店にとっては「抽選券を配るから」が営業再開するきっかけになり、地域の人びとにとっての、お店めぐりを楽しむよいきっかけになりました。盆踊り大会を通して、千駄ヶ谷全体のムードは一段と明るくなりました。岡崎さんのもとにも、商店街の店主や地域の方々から、たくさんの喜びの声が届いたそうです。

あきらめかけたときが、一番のふんばりどころ。

岡崎さんには、いくつものしごとがあります。ふだんは不動産賃貸業を営んでいらっしゃいますが、千駄ヶ谷大通り商店街振興組合の理事としても活動中。盆踊り大会の運営は、その活動の一環です。ほかにも、大学や企業、地域団体と連携をとりながら、さまざまなイベントのコーディネートもしています。

どうしてこんなに、地域と関わることができるのだろう。そんな疑問を投げかけてみると、岡崎さんはふと「『千駄ヶ谷って、あきらめてる街だよね』と言われたことがあるんです」とつぶやきました。千駄ヶ谷に魅力を感じているからこそ、そう言われて悔しかった岡崎さんはすぐに、この街をもっと良くするためのヒントを求めて、さまざまな街を見て回ったのでした。盆踊り大会も、商店街の営業再開も、誰もがあきらめかけているときに、いつも岡崎さんの姿があります。岡崎さんには、すぐにあきらめることはしない、芯の強さがありました。

ちなみに、おとなりサンデーの日には、町内外で開催されているさまざまな交流の場に足を運んでいる岡崎さん。「ふだんなら『何しに来たの?』と言われるような場面でも、『おとなりサンデーだから』と言えば説明がつくんです」。おとなりサンデーは、何か理由がなくても、気軽に参加できるイベント。「ふらっと立ち寄るだけでも、ふだんの活動のヒントが必ずありますよ」と岡崎さんは教えてくれました。

 

渋谷区には、まだ知られていない地域活動がたくさんあります。渋谷という町のことを知りたい人も、おとなりサンデーで何か企画したい人も、引き続き「PICK UP LOCAL ACTION」をぜひチェックしてみてください!

※撮影時のみ、マスクを外していただきました。

テキスト:家洞 李沙(Fan club