2021年7月6日
【PICK UP! LOCAL ACTION】#06 地域と企業、一緒につくる笹塚駅前広場
「PICK UP! LOCAL ACTION」は、渋谷区内のユニークな地域交流・地域活動を取材し紹介していく連載です。2021年6月の地域交流・地域活動強化月間は終了しましたが、事務局では引き続き、地域に根ざして活動し続ける人たちの取り組みを応援していきます。
(改修が予定されている駅前広場。大きなけやきの木があることから、「けやき広場」とも呼ばれています。)
今回取材したのは、笹塚駅前広場の改修プロジェクト。京王電鉄の角田匡平さんが中心となっているこのプロジェクトでは、広場づくりにあたり、笹塚で暮らす人、通っている人にヒアリングを実施しています。ヒアリングをせずに進めることもできたはずなのに、あえてこうした機会を設けているのが、この取り組みのユニークなところ。発起人である角田さんの思いを知るべく、さっそく笹塚保育園で行われたヒアリングにおじゃましてきました。
子どもが過ごしやすい広場は、誰もが過ごしやすい広場。
京王線、笹塚駅。改札前には、待ち合わせをしている人、雨をしのいでいる人、商店街へと向かう人、とさまざまな人の姿があります。そんな改札前、左手にあるのが、今回の舞台である笹塚駅前広場。現在は工事用の柵で囲われていますが、もともとは建物沿いに植栽が並び、少し窮屈な印象がありました。そこでこの場所をよりオープンで、より利用したくなる空間にしようと始まったのが、今回の改修プロジェクト。これまでにも、近隣住民の方々や民生児童委員、障がい者福祉施設の方々へのヒアリングを行なってきた角田さんですが、今回は笹塚幼稚園の母の会の役員の皆さんから、率直な意見を聞く場を設けました。
普段から幼稚園や家庭で子どもたちと接する機会の多い、母の会役員の皆さん。さっそく、新しい広場の使い方を自由に妄想してもらいました。すると始まるや否や、今回のためにお子さんが絵を描いてくれたという方が。「すごい、すごい!」と盛り上がるなか、皆で絵を見ていると「子どもが描いた絵や、地域の方の書道を掲示するっていいかも」というアイデアが出てきました。
(けやきの木にはブランコ、旗の飾りつけ、ポニー。夢が広がります!)
ほかにも、
「笹塚は子ども連れで雨をしのぎながら時間をつぶす場所がないから、屋根があるとうれしい」
「ベビーカーや車椅子でも入りやすいように、段差はない方がいい」
「子どもを連れて入れるフードコートのような場所があったら」
などなど、事前に母の会で集めてきてくださった声も含め、さまざまな意見が出ました。さすがは、母の会の皆さん。子どもたちが楽しく、安全に過ごせる広場の案が出揃いました。
つくったら完成、ではない。対話をつづけていく。
(右)角田 匡平さん
京王電鉄株式会社所属、フレンテ笹塚事務所所長、京王クラウン街笹塚商店会会長。本プロジェクトの責任者を務める。
(中央)笠原 千愛さん
京王電鉄株式会社所属。普段は主にフレンテ笹塚の運営に携わる。
(左)戸所 信貴さん
一般社団法人TEN-SHIPアソシエーション代表理事。角田さんから相談を受け、ヒアリングのコーディネートを行っている。
発起人である角田さんも、皆さんからさまざまなアイデアが出たことを振り返って、地域と企業のこうした関わり合いが求められていたのだということを実感しました。自分たちの思いだけで実現するのではなく、地域の人たちと一緒につくる。構想段階のみならず、引き続き地域と密接に関わり合って開発を進めることが大切だと、あらためて考える機会になりました。
ずっと、何とかしたいと思っていた。
そもそもどうして、駅前広場をリニューアルすることになったのか。そんな疑問を投げかけてみると、「ずっと、宝の持ち腐れだと思っていたんです」と角田さん。以前から、この広場が駅前という好立地にあるにもかかわらず、通り道としてしか利用されていなかったことにもどかしさを感じていたことを話してくれました。数年間、リニューアルすべきベストなタイミングをうかがいながら、今回ようやく、高架下の改修工事とともに、広場の改修ができるようになったのです。
新型コロナウイルスが感染拡大して以来、人と会う機会が減ってしまい、孤独を感じている高齢者や住民の方々も少なくありません。だからこそ、駅前広場が、街に開かれたリビングのような場所になったなら。角田さんは「ただつくるのではなく、地域の皆さんに親しまれる場所をつくりたい」と、教えてくれました。角田さんが真摯にヒアリングを重ねている裏には、長年かけて積み上げられてきた、笹塚という地域の可能性を信じる気持ちがあったのです。広場の完成は年内の予定。どんな広場になるのか、今から楽しみです。
渋谷区には、まだ知られていない魅力的な地域活動がたくさんあります。渋谷という町のことを知りたい人も、地域で何か始めたい人も、引き続き「PICK UP! LOCAL ACTION」をぜひチェックしてみてください!
テキスト:家洞 李沙(Fan club)