2021年8月27日
【PICK UP! LOCAL ACTION】#08 富ヶ谷のペタンク
「PICK UP! LOCAL ACTION」は、渋谷区内のユニークな地域活動を取材し紹介していく連載です。2021年6月の地域交流・地域活動強化月間は終了しましたが、事務局では引き続き、地域に根ざして活動し続ける人たちの取り組みを応援していきます。
今回取材したのは、富ヶ谷の三本杉公園にて毎週木曜日に行われているペタンクの活動。女性中心のコミュニティに比べて、男性中心のコミュニティが少ないなか、今回紹介するペタンクの参加者はほとんどが男性です。それが、今回紹介したいユニークなポイント。#01の取材でここを訪れたときにペタンクに闘志を燃やす男性陣を目にし、「ぜひ取材したい!」と思わずにはいられなかったのです。どうして、ペタンクが男性の居場所になっているのでしょうか。その理由を紐解くべく、取材に行ってきました。
シンプルだけど、ゲーム性のあるペタンク。
ペタンクとは、フランス・パリ発祥のスポーツ。目標となる玉(ビュット)を目がけて金属製の重いボールを投げ合い、相手より近づけることで得点を競うスポーツです。本場フランスでは、お酒や食べ物を片手にペタンクを楽しむのだとか。取材をしたのは8月某日。桜の木はすっかり青々とした葉で覆われ、涼むのにちょうどよい日陰ができていました。この日参加したのは、約20名の皆さん。なかには80歳以上の方もいます。それぞれ感染防止対策を行ったうえで、幡ヶ谷、大山など渋谷区内のさまざまな地域から、ペタンクをしに集まりました。
時間になると、公園に二面のコートが張られ、チーム分けをし、さっそくゲームが始まります。ペタンクに必要なのは、ボールとビュット、スタート位置を示す赤い輪っかだけ。ルールも道具もシンプルなペタンクですが、単に投げ合うのではなく、相手チームのボールを弾くことで自分のボールをビュットに近づけたり、はたまた、ビュットそのものの位置を変えたり。最後まで勝負がわからないところが、ペタンクの魅力です。また、ボールの行方はその日のコートのコンディションにも左右されるため、初心者でも意外と上手く投げられた、なんてことも。わたしも少し混ぜてもらいましたが、一緒にプレーした皆さんがとても上手に褒めてくださり、これは…はまってしまいそうです(笑)。
ペタンクがしたくて体力がついた。
(女性陣からの差し入れ。ペタンクのおつまみも、楽しみのひとつ。)
この活動が始まったのは、公園ができた10年前から。三本杉公園のグランドの大きさや質がペタンクのコートにもってこいだったことから、「渋谷区シニアクラブ」がここでペタンクをしようと考え、そのやり方を「渋谷ブールペタンククラブ」に教えてもらうというところから、活動がスタートしました。現在は三本杉公園の日を含めて週3日活動していますが、参加は自由。ペタンククラブの方の割合がやはり多いそうですが、シニアクラブからも数名が参加しています。
もう10年間も続いているペタンクの活動。ここまで続いているのは、どうしてなのでしょうか。スポーツ推進委員も務めているペタンククラブの原川さんは、「何よりペタンクが楽しいから」続いているのだと教えてくれました。怪我や病気で一時的にできなくても、「またペタンクをやりたい」という気持ちで見学に来ていたら、知らない間に体力がついていた、なんてことも。体を動かすことはもちろん、一緒にプレーするなかで話をしたりコミュニケーションを取ったりすることが心身の健康につながるのです。原川さんは、「ペタンクはシニア世代の適切な運動」だと教えてくれました。
名刺交換のない出会い。だから、参加しやすい。
では、どうして富ヶ谷三本杉公園のペタンクには男性の参加者が多いのだろう。シニアクラブ会長の宍戸さん、萩原さんに聞いてみました。
まず一つ目の理由は、ペタンクのボールは600g〜800gほどの重さがあること。高齢の女性にとってはやや重く、肩や手首への負担が大きい方もいるようです。こうした理由から、シニアクラブに在籍する女性は渋谷区内の別の場所で開かれているボッチャに参加し、男性はペタンクに参加する人が多いそうです。
そして二つ目の理由は、この活動が、純粋にスポーツを楽しめるコミュニティになっていること。参加者のなかには、実は大学教授をしていたり、これまで企業で責任ある役職を任されてきた、という方もたくさんいるそうですが、そうとは知らずに同じチームになっていることもしばしば。社会では肩書きを持って関係性を築くことが多い一方で、ペタンクの前では関係性がフラット。肩書き関係なく楽しめることから、これまで社会で活躍してきた方々ほど、参加しやすいようです。
ときには、公園に来た子どもたち交えてプレーをすることもあるそう。ペタンクはほかのスポーツと比べて運動量が少なく、始めやすく、ゲーム性もあることから、子どもからお年寄りまで楽しめます。渋谷区内でのペタンクの活動は、スポーツとしてのおもしろさをきっかけに地域の人がつながるだけでなく、それぞれにとっての貴重な居場所になっていました。
渋谷区には、まだ知られていない地域活動がたくさんあります。渋谷という地域のことを知りたい人も、おとなりサンデーで何か企画したい人も、引き続き「PICK UP! LOCAL ACTION」をぜひチェックしてみてください!
テキスト:家洞 李沙(Fan club)