2023年4月27日
【渋谷おとなり散歩開催レポート③】多世代交流の花壇で話に花を咲かせ、若年性認知症カフェでお話ししよう!
「渋谷おとなり散歩」とは、さまざまな地域活動に取り組む人たちが案内人となり、いっしょに街を歩きながら、今この地域で行われている活動について楽しく知っていこうというお散歩企画です。
今回はその第3弾。高齢者福祉を中心にさまざまな活動をされている中島珠子さんと一緒に、中島さんの活動の舞台である「ひだまりガーデン」や「町会会館」「若年性認知症カフェ」をめぐりました。
色とりどりの植物が咲き誇る、富ヶ谷二丁目ひだまりガーデン。
今回のプログラムは、こんな感じ。お散歩しながら3つの場所をめぐります。
車椅子もベビーカーも通れる「富ヶ谷2丁目ひだまりガーデン」
2023年3月26日、日曜日。雨がしとしとと降るなか、10数名の参加者の皆さんがひだまりガーデンに集まりました。春の日なだけあって、チューリップやパンジーなどの花々がきれいに咲いています。
写真手前から3番目が、今回の案内人である中島珠子さん。
ガーデンには100種類以上の植物が植えられており、四季折々表情のちがった風景を楽しめます。「花壇よりも、イギリスのナチュラルガーデンのような雰囲気にしたい」と中島さん。強すぎる色の花は植えないなど、細やかな工夫が施されています。
車椅子やベビーカーも通れる広い小道が特徴。5月ごろになると、薔薇の花のアーチがきれい。
ひだまりガーデンが誕生したのは2016年。渋谷区から借り受け、運営や管理を地域の有志で行っています。ガーデンの柵は、子どもや車椅子の目線でも気にならない高さに設計。またゆっくり休みながらお花を楽しめるようにと、手作りのベンチも設置しました。この地域に馴染みのある方々が運営されているからこその、心地よさがあります。
ある日は作業員の方の休憩場所に、ある日は地域の方の散歩コースとしてなど、日々さまざまな人が利用しているひだまりガーデン。年に一度のガーデンフェスティバルの日には、ガーデンのハーブを使った冷たいハーブティが振る舞われるなど、地域交流の場所にもなっています。
地域で何かしたいときに、かりられる場所「富ヶ谷二丁目町会会館」
さて、続いてはガーデンから徒歩数分、富ヶ谷二丁目町会会館を目指してお散歩。
地域の施設についての豆知識が繰り広げられるなど、お散歩中は参加者同士のおしゃべりの時間にもなっていました。
第2の目的地、富ヶ谷二丁目町会会館に着きました!
町会会館着いたら、まずは参加者の自己紹介からスタート。
「地域に顔見知りの人がいたら、もしも災害が起こっても安心なのではないかと思って」
「最近、家の周りのごみ拾いを始めたのですが、少しずつ声をかけてもらえるようになった」
「認知症に関する活動をしている。富ヶ谷二丁目は、地域での活動が活発だと聞いて」
などそれぞれ理由はあるものの、皆さん地域への関心が高い方々ばかり。
富ヶ谷二丁目町会会館にて、参加者の皆さんと。もともとは靴を脱いでスリッパで入る場所でしたが、土足で入れるようにしたことで、より気軽に来られる場所に。
富ヶ谷二丁目町会会館は、町会が所有する、地域のための場所です。空調やミニキッチン、椅子やテーブルなど基本的な設備が揃っており、地域交流の舞台となっています。
たとえば、「どんぐりとちびどんぐり」という活動。「新米を握る会」「子ども服のリサイクル」「フラワーアレンジメント」「親子ヨガ」などさまざまなイベントがここで開催されています。「40代のファミリー層が多い富ヶ谷だからこそ、多世代交流の機会を増やしたい」と中島さん。
プロジェクターやスクリーンも完備。有志が集い、映画の上映会も行われることも。雨の日でも集える場所は貴重です。
「地域で何かをしたいと思っても、かりられる場所がない」のが普通。町会で施設を持っているのは、めずらしい事例です。だからこそ町会会館をオープンすることは一筋縄ではいかないこともあったようですが、さまざまな協力もあり、コロナ禍の2020年9月にオープン。子育てママさんをはじめ、地域に住む人同士が顔見知りになるきっかけの場所になるなど、ここで生まれたつながりがたくさんありました。
「高齢者の居場所は多くない。いつでも開いていて、いつでも遊びに行ける場所にできたら」と中島さんは富ヶ谷二丁目町会会館の未来について語ってくれました。
同じ悩みを持つ家族の情報交換の場「若年性認知症カフェ」
最後は、「総合ケアコミュニティ・せせらぎ」へ。富ヶ谷から西原へとお散歩します。
この近くに住む方が、街のガイドのように案内してくれる場面も。
雨の日の桜もきれい。
あっという間に第3の目的地に到着!1階にある明るいカフェにて、お昼ごはんを食べました。
ごく普通に利用している方々もいらっしゃる、明るく開けたカフェ。ここでは月に一度、若年性認知症の本人と家族の集いである「カフェマリエ」が開催されています。
この日はその、月に一度の日。カフェマリエの参加者とおとなり散歩の参加者が入り混じり、普段はあまり聞くことのできない、若年性認知症のご本人とそのご家族のお話を伺うことができました。
そもそも若年性認知症とは、65歳未満でなる認知症のこと。仕事をしている人、子育てをしている人がなる場合も多く、高齢者とは異なる生活設計が必要になります。そしてそのためには、ご家族の協力も欠かせません。あるご家族の方は「できれば仕事を続けながら介護をしたかったが、毎日外に出て歩いてしまうので、どうしても仕事を続けられない状況になった」。病院の先生の情報や保険のこと、性能の良いGPSのことなど「ここに来ると話せる仲間がいる」とお話してくれました。
もしも自分や家族が突然、若年性認知症になってしまったとき、どこに相談したらいいかわからないときに、まずは地域包括支援センターへ相談すると良いことも教えてもらいました。福祉関係の専門職の方が常駐しているので、必要な場所へとつないでくれるようです。
カフェマリエのモデレーターをされている中島さんは、今回のカフェマリエに若い世代が参加していたこともあり、「ここでの活動を、次の世代へとつなげたい」と話してくれました。
総合ケアコミュニティ・せせらぎからは、きれいな桜の花を見ることもできました。
「ひだまりガーデン」「町会会館」「若年性認知症カフェ」をめぐった今回の渋谷おとなり散歩。参加者の皆さんからは、「富ヶ谷の皆さんはアクティブ!」「もっと話を聞いてみたくなった」「歩きながら、地域のことを見たり感じたりできたのがよかった」などなどの感想が集まりました。自分一人では知り得ないことも、誰かを通じてなら気軽に、そしてちょっと深いところまで知ることができる。中島さんを通じて、渋谷区は富ヶ谷〜西原で行われている地域活動の一端にふれることができました。
テキスト:家洞 李沙