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2023年4月28日

【渋谷おとなり散歩開催レポート④】代々木上原のイスラム世界を見学!トルコ料理で異文化交流を楽しむ夜散歩。

「渋谷おとなり散歩」とは、さまざまな地域活動に取り組む人たちが案内人となり、いっしょに街を歩きながら、今この地域で行われている活動について楽しく知っていこうというお散歩企画です。第4弾である今回は、美しいモスクが有名な「東京ジャーミイ」をお散歩。案内人は、東京ジャーミイ・トルコ文化センターの広報・出版を担当する下山茂さんです。


まだ日が明るいうちのモスク。一度は行ってみたいと思ったことがある方もいるのでは?


今回のプログラムは、こんな感じ。断食明けの食事会「イフタール」に参加できる貴重な日。

「日常の小さな交流こそ、異文化交流」

2023年3月28日、火曜日。集合場所は、代々木上原は東京ジャーミイです。少し早く着いたので、周辺を散策。美しい建築物は、外から見ているだけでも楽しいです。

建物に入って1階の講堂へと進むと、すでに参加者の皆さんがちらほら。時間になると、まずは自己紹介からはじまります。
「異文化を肌身で感じてみたくて」
「この近くで生まれ育ったけれど、意外と近所のことを知らないなと気がついて」
「一人暮らしの方や最近引っ越してきた方など、街との接点が少ない人と、街との入り口になりたいと思っていて」
などなど、暮らす場所も関心もさまざまな10数名の皆さんが参加されました。


写真中央でお話しているのが今回の案内人である下山さん。話し込むうちに、だんだんと日が暮れていきます。

下山さんは、生まれながらにしてイスラム教徒だったわけではなく、20代の頃に興味を持って入信し、以来40年近くイスラム教徒。大学卒業後は出版業界で編集の仕事に就き、仕事の一環でトルコ文化センターの出版物の手伝いや広報も担当していました。転機となったのは2001年9月11日。テロ事件以降、イスラム教に対する世間のイメージがネガティブなものに変わってしまったと強く感じるようになりました。
そのイメージは、現在まで尾を引いています。東京ジャーミイで集まりがある日には、どうしてもいつもより駐輪する自転車の量が多くなってしまったり、建物の前で話し込む人たちが多くなったりしてしまいますが、そんな光景を目の当たりにした地域の方から、お叱りの声が届いたり、よくないうわさが飛び交ってしまったりすることもあるそうです。
なんとか地域の方々と良い関係を築きたいと思った下山さん。あるとき「ご近所の方々にあいさつをしていないことに気がついた」と言います。そこですれ違う方々へのあいさつをはじめたところ、「いい天気ですね」「膝の具合はどうですか?」といった何気ない会話まで交わすようになりました。すると次第にご近所にも顔見知りが増え、お叱りの声も減っていったそうです。「異文化交流は、大袈裟なことではない。日常の小さなことができるかどうか」なのだと、下山さんは教えてくれました。


建物の入り口。見学は自由。5名以上の場合は、ガイド付きの見学を予約できます。

ラマダーン明けの食事会「イフタール」に初参加!

さて、そうこうしているうちに日はすっかり暮れ、講堂は礼拝を終えた皆さんのイフタールの時間に。私たちも流れに乗って、夕食をいただきます。


当日は満席状態。これでも少ない方で、休日には肩がぶつかってしまうくらい多くの人が集まります。


お皿を取り、順々によそってもらうスタイル。子どもから大人まで、みんな同じメニュー。給食を思い出します。


左上から時計回りに、とうもろこしのスープ、スパゲティ、ミルクプディング、野菜とキョフテ(ミートボール)の煮込み。

席に着いたら、さっそくいただきます。断食明けの胃袋に、そして子どもから大人まで食べられる料理なだけあって、優しくて懐かしい味わい。ところどころスパイシーで、歯ごたえもあり、満足感のあるお食事でした。食べながら、参加者同士でおしゃべりする場面も。

ラマダーンの一ヶ月間は、日中一切の飲食を断ちます。お腹が空いて、忍耐も必要。でもだからこそ、貧しくて食べる物がない人たちの気持ちがわかり、助け合う精神を思い出させてくれるのだそうです。日没後のイフタールは、断食明けの喜びを分かち合う食事会。とても貴重な機会に参加させていただきました。

ハラールマーケットで、お買い物タイム。

食事後は少し時間ができたので、施設内のハラールマーケットで各自お買い物タイムに。


マーケットだけでも、利用することができます。


思わずいろいろと買い込んでしまいたくなる…!ワクワクが止まりません。


お菓子やお茶、冷凍食品や飲み物、雑貨などが揃っています。

さて、買い物から戻ると、今度は下山さんが、トルコの伝統的な陶器を見せてくれました。よく見ると、描かれているのはチューリップなどの草花。あまり知られてはいませんが、トルコはチューリップの原産国なのだそうです。


国旗の間には、トルコブルーと幾何学模様が美しいタイル。

さて、いよいよモスクへ。

下山さんの案内で、最後にモスクへとおじゃまします。女性はストールで頭を覆うのがマナー(もし忘れてしまっても、貸出用のスカーフを利用できます)。


ここにもチューリップ。モスクの前の回廊は、風が通り抜ける心地のよい場所です。


モスクの中のステンドグラスが、少しだけ透けて見えました。


靴を脱いで中に入ります。ふかふかした絨毯。見上げると…


圧巻…!荘厳なまでに美しい幾何学模様に思わず見惚れてしまいます。


思い思いの場所で礼拝する方々。お父さんが礼拝をする横で、子どもたちが走り回ったりでんぐり返しをしたり、なんて日常的な光景も。


礼拝堂の隅に座らせてもらいながら、今日の振り返りタイムへ。下山さんの案内で「イフタール」「ハラールマーケット」「礼拝堂」をめぐり、異国情緒漂う体験ができた今回。
「意外とオープンな場所で、驚いた」「ぜひ、また人を連れて来たい」「食事や建築をはじめ、イスラム文化に直に触れることができた」などなどの感想が集まりました。
一人では足を踏み入れられなかった場所にも、誰かを通じてなら気軽に、そしてちょっと深いところまで知ることができる。下山さんを通じて、未知なる文化の一部に触れられ、心もお腹も満たされたお散歩会になりました。

 

テキスト:家洞 李沙

【追記】
後日、案内人の下山さんより、渋谷おとなり散歩を振り返ったコメントをいただきました。
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今回の散歩企画では、食事と建物見学をしました。参加されたみなさんにとって、東京ジャーミイを身近に感じるきっかけになったなら何よりです。
ただ、当日を振り返ると、もう少し参加された皆さんとじっくりお話ができたら良かったなと思いました。
東京ジャーミイでは「挨拶から始まる道端の井戸端会議」を大事にしています。
次は、お茶でも飲みながら井戸端会議をやりましょう。
またぜひ、来てください。
東京ジャーミイ・トルコ文化センター 広報・出版担当 下山 茂
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