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2023年7月21日

【PICK UP! LOCAL ACTION】#13 Beer for Seed by つながる菜園

「PICK UP! LOCAL ACTION」は、渋谷区内のユニークな地域交流・地域活動を取材し紹介していく連載です。2023年の渋谷おとなりサンデーの日は終了しましたが、事務局では引き続き、地域に根ざして活動し続ける人たちの取り組みを応援していきます。

今回取材したのは、渋谷区ササハタハツエリアの公立小学校にて「つながる菜園プロジェクト」を運営している佐々木桐子さん。普段から、学校菜園を通じて子どもたちの居場所や地域のつながりづくりを行っている佐々木さんですが、今回はその活動の一環として「Beer for Seed」という初の試みを実施されるとのこと。一体、どのような思いで始め、どんな場になったのか。おじゃましてお話をうかがってきました。

飲んで、食べて、おしゃべりして。そんな楽しい時間が、地域のためになっている。

初台駅から徒歩数分。緑道沿いのカレー屋「ガイラ」さんの2階が、今回の会場です。開始時間が近づくにつれ、会場には参加者の方々がぱらぱらと集まり始めます。今回は約10名の方々が参加されるとのこと。普段からつながる菜園に協力してくださっている方、プロジェクト以前から佐々木さんの夢をずっと聞いてくれている方、プライベートでもつながりがある方、などなど。

会場には、つながる菜園の未来を描いたシートも掲示されていました。達成されたものはチェックしたりはがしたりしながら、思いついたものはその都度書き足されており、歴史を感じます。よく見ると、「Beer for Seed」と書かれた付箋も発見!

テーブルには、美味しそうな小カブの甘酢漬けが。こちらは、菜園で収穫したものを、ガイラさんに調理していただいたもの。菜園で獲れたお野菜をみんなで囲んで食べる、まさにfarm to table


菜園にて収穫した小カブ。

左:ガイラのかくれ店主 こみずうつるさん。
右:佐々木さんと一緒につながる菜園を運営している荒島智貴さん

テーブルには、小カブの甘酢漬けの他にも、たくさんのお料理が並びました。カレーや餃子、空芯菜の炒め物、そしてビール。この参加費の一部が、つながる菜園の活動資金に充てられます。

参加者の皆さんが集まったところで、ビール片手にカンパーイ!

つながる菜園プロジェクトの3年間の歩みを、動画で振り返る場面もありました。

 

美味しい料理を囲みながら、何気ない会話をかわす楽しい時間。そんな時間が実は、地域の飲食店で食事をすることでもあり、つながる菜園プロジェクトを知る機会にもなり、さらにその先にある子どもたちの居場所づくりを応援していることにもなる。菜園から食卓へ。つながる菜園プロジェクトの広がりを感じる、記念すべき日の様子を垣間見ることができました。

菜園が子どもたちの居場所になり、大人たちの交流の場になった。

佐々木さんがつながる菜園を始めたのは20217月。大きなきっかけとなったのは、大学院の研究室の仕事の一環で1年間、菜園学習のプロジェクトを担当したことでした。そこには、音楽室や保健室には行けても教室には行けなかったり、字の読み書きがむずかしかったりと、さまざまな事情を抱えている子どもたちが全国から集まっていました。二児の母でもある佐々木さん。自分の子どものように彼らと関わるなかで気がついたのは、みんな自分の意志で菜園に来ているということでした。野菜が枯れないようにするにはどうしたら良いかを積極的に調べたり、学校には行けなくても菜園には来られるという様子を見たりしていて、子どもたちに問題があるのではなく、学校に居場所がなかっただけなのだと気づきました。そして、一人でも菜園を居場所だと思う子がいるのならと、つながる菜園プロジェクトを始めました。


今回お話を伺った、佐々木桐子さん。

現在の拠点は、渋谷区はササハタハツエリアの公立小学校の中の学習菜園と、学校の向かいの公園花壇。学習菜園では、毎週火曜日の休み時間を「菜園タイム」とし、子どもたちと一緒にじゃがいもやキャベツ、ハーブ、学習用の大豆など季節の野菜や植物を育てています。菜園タイムには毎回、種まきや水やり、収穫をしたいとたくさんの子どもたちがやってきます。そのなかで野菜に棲みついているモンシロチョウのさなぎを見つけたりと、生きた学びの場にもなっています。

居場所になっているのは、子どもたちだけではありません。つながる菜園は同じ意志を持って集まる大人の協力があってこそ。つながる菜園のサブリーダーでもある荒島さんは「究極の異業種交流」だと教えてくださいました。土や雑草に触れながら無になれる時間は、普段それぞれの仕事をしているからこそ、貴重で必要な時間です。そして彼らの存在があるからこそ、学校菜園を飛び出して、地域にもそのつながりが広がりはじめています。

つながる菜園プロジェクトは、子どもから大人まで、あらゆる世代の交流の場であり、地域のつながりが生まれる場となっていました。

「誰かのため」というよりも、「自分たちが楽しい」からこそ、つづけられる。

佐々木さんにとって、今の活動の原体験となったのは、お父様の仕事の関係で学生時代にタンザニアへ行ったことでした。そこで体験したのは、青空の下みんなでテーブルを囲んで食事をすることの豊かさ。それ以来、食を通じた場づくりをしたいと思いながら活動されてきました。今回の「Beer for Seed」はまさに、いつか実現したいと思ってきた場だったのです。

つながる菜園プロジェクトは、子どもたちにも、大人たちにも、そして飲食店や地域にもよろこびをもたらしています。しかし佐々木さんは、「誰かのためではなく、自分たちが楽しむことを大切にしている」のだと言います。「Beer for Seed」の場にいても、そのことを強く感じました。

つながる菜園プロジェクトは佐々木さんにとって、生活の一部であり、自分たちの感覚に素直になれる場所であり、そして自分たちが良いと思う光景を実現し、世の中に問いかけていく活動なのではないか。意志を持ち、健やかに、そして楽しく活動を続けている佐々木さんのことを、尊敬せずにはいられませんでした。

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渋谷区には、地域に根ざして活動している人たちがたくさんいます。渋谷という地域のことをもっと知りたい人も、おとなりサンデーで何か企画したい人も、引き続き「PICK UP LOCAL ACTION」をぜひチェックしてみてください。

 

テキスト:家洞 李沙