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2023年7月10日

渋谷おとなりサンデー 2023年6月4日レポート 〜おとなりさんと、育てよう〜

6月の第一日曜日は、渋谷おとなりサンデーの日。7回目となる今回も、無事に開催されました!直前まで天気の心配もありましたが…当日は晴天!渋谷おとなりサンデーの日、毎年のように晴れてくれています。うれしいですね。
さて、今年の当日レポートも「PICK UP! LOCAL ACTION」で取材執筆を担当している家洞(やぼら)がお送りします。これまでも地域交流・地域活動を行っている方々に取材をしてきましたが、2023年の渋谷おとなりサンデーではどんなことが行われたのか、気になる企画をいくつかまわってきましたので、当日の様子をレポートしていきたいと思います。

と、その前に。渋谷おとなりサンデーについて、あらためて説明を。
そもそもこの取り組みのヒントになったのは、1999年に始まったフランス・パリの「隣人祭り」でした。隣人の孤独死に心を痛めた一人の青年が「近所の人たちと顔見知りであれば、こんな悲しいことは起きなかった」と行動を起こし、アパートの住人たちと中庭にワインやチーズ、パンなどを持ち寄って年に一度集まったのが、この隣人祭り。すると翌日からさっそく、アパート内ではあいさつが交わされるようになったそうです。また国は変わりますが、アメリカでも近隣の人たちとさまざまな活動を一緒に行なう「ネイバーズデイ」という日があります。
東京のような都会では、隣に住んでいる人のことを知らなかったり、住んでいる街に顔見知りがいなかったりということがよくありますが、渋谷区でもこんなふうに顔見知りの輪が広がるといいなという願いを込めて、2017年から渋谷おとなりサンデーをスタートしました。今年は約50もの当日企画が集まり、渋谷のあちこちでにぎわいが生まれました。渋谷に暮らす人も、働く人も、遊びに来る人も、みんなで何かをする日。どんなことが行われたのか、さっそくレポートしていきます。


(2023年のフライヤー。今年のテーマは「おとなりさんと、育てよう。」)

10:00 開会式【恵比寿ガーデンプレイス】
開会式・区長の開会宣言

暑いくらいの晴天!写真は、開会式前の恵比寿ガーデンプレイスです。今年はここ恵比寿に運営事務局を設置し、恵比寿を拠点に活動する団体とのコラボレーション企画を開催します。定刻に近づくにつれてだんだんと人だかりができ始め…

開会式が始まると、こんなにたくさんの人たちが!今年も長谷部区長の開会宣言でスタート。プロバスケットボールチーム、サンロッカーズ渋谷のチアパフォーマンスもあり、にぎやかな開会式となりました。


写真は、毎年参加してくださっている東海大学、青山学院大学の学生ボランティアスタッフの皆さん。今年はロゴ入りのバンダナがつくられ、首に巻いたり髪に結ったりして活用されました。

10:30 【えびすどろんこ山プレーパーク】
「やってみたい」を育てよう

さて。開会式が終わると、一行は近くのえびすどろんこ山プレーパークへと向かいました。恵比寿ガーデンプレイスから徒歩3分。昨年9月にオープンして以来、多くの子どもたちでにぎわっているようです。

(奥に見える水色の格子の建物は、恵比寿駅から続く動く歩道。アクセスの良い場所です。)

(開会式の会場に近いこともあり、皆さんでプレーパークを見学しました。)

公園には、大きなどろんこ山が一つ。いわゆる遊具のようなものは見当たりませんが、どろんこになりながら土や水に触れられる公園は、都内ではなかなかないもの。公園の遊具に使用禁止の貼り紙がされるなど、何かと遊びを制限されがちですが、ここは子どもたち自身が考えて遊びを見つけることができる公園です。

おとなりサンデーの日も、たくさんの親子がプレーパークに遊びに来ていました。どろんこ山を駆け上ったり、水を流して川をつくったり、泥水に浸かったり。自分のやってみたいことを見つけて、自由に遊んでいました。


(泥だらけになって遊ぶ子どもたち。都会のど真ん中にあって、土や水、風を感じながら思うままに外遊びができる場所です。)

(プレーパークの掲示板にはこんな張り紙が。使わなくなったものも誰かの遊び道具として活用されるかも。)

11:00 【恵比寿ガーデンプレイスサッポロ広場】
「無制限あそび×レッジョ」 紫陽花

さて、次へ急ぎます。こちらでは、芝生に大きな真っ白の紙が敷かれ「無制限あそび」の真っ最中。口に入れても安心な米粉えのぐを中心にスポンジ、霧吹き、プチプチ梱包材など、さまざまな素材や道具が並んでいます。

こちらの企画は、恵比寿親子イベントPJチームの皆さん(講師:うりママ、監修:木下まいこ先生)によるもの。「無制限あそび」とは、五感をフルに使ってやっちゃダメを解放するモンテッソーリ教育にもとづく感触あそびのこと。そこにイタリア発祥のレッジョエミリア アプローチ教育の要素をとりいれた内容になっています。離乳食が始まった0歳から楽しめ、この日も赤ちゃんから幼児まで、そして大人の皆さんも楽しんでいました。


(さまざまな素材を使って、それぞれが思い描く紫陽花を作ります。紫陽花を作っても作らなくてもよい、なんでもOKなのが無制限あそび。)

普段、おうちの中ではできないことも、屋外であれば気にせず広げられます。ときどき雨の音が会場に流れると、霧吹きで水をかけあったり、泡をつくったり。一つの素材にとらわれず、大人も子どもも自由にアート体験を楽しんでいました。
その後、サッポロ広場では「ぐちゃぐちゃ遊び(講師:森井菜々子)が開かれたようです。


(恵比寿ガーデンプレイスの横を通って移動中。新緑が気持ち良い季節です。)

11:30 【景丘の家】
「つながる笑顔」を育てよう

続いては、恵比寿駅近くの景丘の家へ。こちらでは、かまどで炊いたご飯をみんなで食べているそうです。

ここ景丘の家は「こどもと食」をテーマに、あらゆる世代が集まり、寄り添う居場所としてオープンした場所。入り口の扉を開くとすぐ、囲炉裏のある小上がりが見え、そのすぐ横には本棚とパソコンスペース、奥にはキッチンがあります。佇まいは、まさにおうち。

キッチンには…たくさんのおむすびが!大きなかまどで炊かれたごはんを一つひとつ握ったそうです。湯気も出ていて、とっても美味しそう。子どもたちは本を読んだり、数人でパソコンゲームをしたり、小上がりで休んだり。公民館のような場所という表現が近そうですが、わたしの地元にはこんなに素敵な場所はなかったので、新鮮でした。この施設には他にも、大きな遊具のある部屋や、音楽やダンスができる部屋もあり、子どもたちの遊び場や居場所として活用されています。



(今日のかまど飯とは別に、月に一度、こども食堂が開催されているそうです。気になる方はチェックしてみてください。)


(恵比寿駅へと向かう途中。直前までの台風予報がうそのような良い天気!)

13:15 【幡ヶ谷社会教育館】
一緒にガヤリンピックを楽しもう!

さあ、ここで恵比寿から幡ヶ谷へと移動します。幡ヶ谷六号通り商店街を通って、目的の場所へ。

着きました!ここでは、知的障がい者教室GAYAの皆さんが、室内スポーツを楽しんでいるそうです。GAYAは月に一度、ここ幡ヶ谷社会教育館にて活動。障がいのある人もない人も「わいわいがやがや」集まり、スポーツや料理、音楽などさまざまなプログラムを通して仲間づくりをしています。

当日も3つのチームに分かれ、いくつかの種目で競い合いのガヤリンピックが開催。まずは、ラジオ体操からスタートします。参加者は、年齢層も幅広い大人の方々です。

手作りの優勝杯も返還されて、いよいよスタートです!書かれた年度を見ていると、この活動が続いてきたことの歴史を感じます。

最初の競技は、トイレットペーパータワー。一番高く積み上げたチームの勝ちというもので、一人ひとつずつトイレットペーパーを重ねて行くのですが、これが白熱。バランスを見ながら早くしかも丁寧に行うには、チームワークも必要です。



(この競技は黄色チームの勝利!)

次は、段ボールを押して進むキャタピラーレース。躍動感あるレースに、会場も盛り上がります。競技をしない人たちは、座って応援したり、会場内を動き回ったり、自由に過ごしています。

次はお菓子釣り。この競技では競い合わず、自分で釣ったお菓子はこの後の休憩時間に食べます。意外とむずかしい模様。釣る場所や竿など譲り合いながら、皆んなで楽しみます。

時間の都合で、見られたのはここまで。施設内にはこれまでの活動記録も残されていました。何かきっかけがないと、仲間づくりはしづらいもの。だからこそGAYAでは、1年間同じチームでさまざまなイベントをともにします。月に一度、1年間顔を合わせていたら自然と顔見知りになってしまうもの。わいわいがやがやと楽しむことが、仲間づくりにつながっていました。

なお、知的障がい者教室GAYAでは、一緒に活動する人(ボランティア)を募集しているそうです。気になった方はぜひGAYAのTwitterまたは幡ヶ谷社会教育館までお問い合わせください。


(ハロウィンやクリスマス、節分など、季節ごとにさまざまなイベントが開催されているようです。)

(施設の外にはこんなものも。家の近くにあったなら、ぜひ活用したい取り組みです。)

14:00 【せせらぎ冒険遊び場】
七輪で、こんがり食パンを焼こう!

さて。次は、幡ヶ谷駅の反対側、渋谷区スポーツセンター方面へ。スポーツセンターの端に位置する木々が生い茂るこの子ども広場が、せせらぎ冒険遊び場です。


(暑い日でも、木陰ができるのがうれしいですね。)

串に食パンを刺し、七輪で炙る子どもたち。大人も一緒になって七輪を囲む様子は、まるで井戸端会議のようです。わたしも体験させてもらいましたが、ふらっと参加できる気軽さがありました。数分も経てば、食パンはこんがり。中はフワフワ、外はカリカリ、炭火のいい香りのついた美味しいおやつのできあがり。


せせらぎ冒険遊び場には木々がたくさんあるので、当日もハンモックをかけて遊んでいる子どもたちがいました。この遊び場を運営しているのは、せせらぎファイン冒険遊び場の皆さん。毎週日曜日に子ども広場を開けると、木にロープを張ったり、木登りをしたり、ダンボールで作ったキッチンでおままごとをしたり、工具をつかって木工作をしたり、いろんな遊びが繰り広げられます。大切にしているのは「ケガとお弁当は自分持ち」精神。渋谷区がこの場所のあり方に共感してできたのが、冒頭でも訪れたプレーパークなのだそうです。



(手書きのフライヤーも、とってもかわいらしかったです。)

15:00 【恵比寿ガーデンプレイス】

さあ、そろそろ日も落ちる頃。恵比寿に戻ります。開会式が行われていた時計広場あたりでは、サンロッカーズ渋谷の皆さんによる、フリースローゲームが開催中。

「無制限あそび」や「ぐちゃぐちゃ遊び」が行われていたサッポロ広場では、今度はビニールバッグや傘にペイントするワークショップが開催されていました。今回は少し年齢が上の、2歳〜小学校低学年向けのもの。手を絵の具で染め上げながら、自由にペイントしています。顔や身体に描いている子もいて、とても楽しそう。大人になるとなかなか表現できない大胆さです。


その横では、子育てスポットの情報交換コーナーもありました。朝は真っ白だった地図にも、こんなにたくさんの付箋が!おすすめの公園や子どもを連れて入りやすいお店の情報が集まっていました。ここにあるのは、すべて経験に基づいた生の声。近くに住んでいても意外と知らない情報がありそうです。ひとつ書いたら10を知れるような、貴重な掲示板になっていました。

こうして日が暮れ、2023年の渋谷おとなりサンデーも無事に幕を閉じました。どの活動にも、最初に声をあげ、継続的に行動してきた人の存在があるはず。「PICK UP! LOCAL ACTION」でもそんな人や活動を、これからもきちんと取材していきたいと思いました。
子どもの遊び場や感性を育てたり、仲間の輪を育てたり。今年のテーマ「おとなりさんと、育てよう。」のとおり、今回は皆んなで育てる取り組みをたくさん見させてもらうことができました。子育てや障がいなど。一人ではむずかしいことも、「おとなりさん」という人と人とのつながりや地域の助け合いがあれば、楽しく乗り越えられることもある。渋谷おとなりサンデーは、おとなりさんの存在に気づく大切な日だということをあらためて感じました。今年も、ありがとうございました!また来年も無事にこの日を迎えられることを願って。

テキスト:家洞 李沙