ニュース

2023年9月26日

【PICK UP! LOCAL ACTION】#14 人と地域とつながる、草むしり隊ボランティア

「PICK UP! LOCAL ACTION」は、渋谷区内のユニークな地域交流・地域活動を取材し紹介していく連載です。2023年の渋谷おとなりサンデーの日は終了しましたが、事務局では引き続き、地域に根ざして活動し続ける人たちの取り組みを応援していきます。

今回取材したのは、大学生の草むしり隊ボランティアの活動。青山学院大学シビックエンゲージメントセンターと、ささはた(笹塚・幡ヶ谷)地域で「まちのお手伝いマネージャー」を実施しているTEN-SHIPアソシエーションが連携し、この地域で困りごとを抱えているお宅の草むしりを行っているそうです。どのような活動なのか、実際に参加しながらお話を伺ってきました。

草むしりはけっこう大変。でも、きれいになると気持ち良い。

笹塚駅から徒歩数分。とあるお宅のお庭におじゃまし、今回の活動は行われます。参加したのは、お庭のオーナーさん、TEN-SHIPアソシエーションの戸所信貴さん、そして青山学院大学の大学生8名です。準備を済ませ、さっそく草むしりがスタート!

お庭には、つつじや紫陽花などの季節の植物が植えられているほか、大きな藤棚があったり、紫蘇が生えていたりと、都内とは思えないほど緑豊か。一方で、8月にもなると雑草がたくさん生えてきたり、つるが伸びてきたりと、植物は勢いを増していきます。その勢いは、通りの電線にかかってしまいそうなほど。高いところにある枝葉を切ったり、たくさん生えてしまった雑草をすべて抜いたりすることは、さらに暑い中となると、一人ではとても大変な作業です。


雑草は鎌を使い、根こそぎ抜いていきます。オーナーさんが使い方を教えてくれました。


高いところのつるは、高枝切りバサミで。


ブルーシートを敷いて、その上に抜いた雑草を載せていくのがポイント。


TEN-SHIPアソシエーションの戸所さん。雑草を圧縮しながらブルーシートをくるくると巻き、そのまま袋に入れてブルーシートだけを引き抜くことで、一度にたくさんの雑草をスムーズに袋に入れることができるのだと教えてくれました。

一人では大変な作業も、体力のある大学生の力を借りれば、あっという間。最初は慣れない作業も、オーナーさんや戸所さんの教えもあってどんどん進んでいきます。そして、たくさん生えていた雑草が…

こんなにすっきり!休憩を挟みながらの約1時間で、お庭のさまざまな場所がきれいになっていきます。

お庭の入り口の通りも…

こんなにすっきり!タイルの間に生えていた苔が剥ぎ取られ、とってもきれいになりました。

参加した大学生の皆さんに感想を聞いてみると、「座って雑草をむしるのは意外と大変な作業だった」「苔を剥がすのが楽しかった。きれいになってストレス発散になった」などの声。大学生の皆さんの力を借りることで、お庭の雑草があっという間になくなりました。

高齢者支援サービスでは解決できないことが、まだまだある。


先頭にいるのが、TEN-SHIPアソシエーションの戸所さん

どうして、今回の活動を実施しようと思ったのか。その背景を戸所さんに聞いてみました。戸所さんはこれまで10年以上、地域包括支援センターに勤め、貧困、疾病、認知症、障がい、介護などのさまざまな課題を抱える人たちと関わってきた方。TEN-SHIPアソシエーションでは、ささはた地域を拠点に、困りごとを抱えている方々のお手伝いをしています。日本の孤独死の多くは東京23区で起こっていると言われており、都心部ならではの課題がたくさんあるからこそ、笹塚や幡ヶ谷という地域を拠点に活動されています。

一方で、困りごとがあるもののどこに相談したら良いかわからなかったり、周囲が問題だと認識した時にはすでに深刻な状況になっていたりと、社会保障制度を活用する以前にたくさんの潜在的な課題があるのだそう。地域に住む人々の状況をまずは知り、必要な支援へとつなぐこと。これを「アウトリーチ」と言うそうですが、その一環が、今回の草むしり隊ボランティアなのです。

東京で地域の方と関わる機会は少ない。草むしりが、地域とつながるきっかけに。

草むしり隊の活動を始めて3年。今回のように草むしりを実施した結果、変わりなく過ごされていることがわかったということも多くありますが、続けていくことに意味があります。
オーナーさんは「草むしりをやろうという戸所さんの優しさに感謝している。学生さんたちにとって、思い出になってくれたらうれしい。細やかにやってくれて助かった。」と伝えてくれました。

戸所さんは「夏のサポートの大半は、草むしりや植え替えなど植物に関すること」だと言います。大切にしているお庭も、夏になると一瞬目を離した隙に雑草が伸びきってしまって、気がついたときにはお手入れするのが億劫になってしまうもの。お庭は毎日のように目にするものだからこそ、一人でやらなくてはいけないことを考えると、お庭が目に映るたびに気が滅入ってしまいそうです。些細なことのように思えますが、草むしり隊の活動は、さまざまなお庭のオーナーさんの助けになっていることだろうと思えました。


ボランティアのお礼に、オーナーさんからクラッカーをいただきました。


夏らしいハイビスカス。とってもきれいに咲いていたので、思わず写真に撮らせてもらいました。


カラフルな貝殻を敷き詰めたお庭の一角。オーナーさんがこのお庭を大切に、そして楽しくお手入れされてきたことがうかがえます。

参加した大学生の皆さんは「草むしりをしてみたかった。掃除をしてボランティアになるなら」「もともとボランティアに興味があって」「大学の先輩の紹介で」などさまざま。夏休みの合間を縫って草むしりに参加した皆さんの心意気、素晴らしいです。
多くの大学生にとっては、地域の方々と交流する機会はなかなかないもの。この出会いが、いつかの何かにつながるかもしれません。草むしり隊の活動は、お互いに顔見知りになるきっかけにもなっていました。

渋谷区には、地域に根ざして活動している人たちがたくさんいます。渋谷という地域のことをもっと知りたい人も、おとなりサンデーで何か企画したい人も、引き続き「PICK UP! LOCAL ACTION」をぜひチェックしてみてください。

テキスト:家洞 李沙

【追記】
後日、青山学院大学シビックエンゲージメントセンターの島﨑さんより、草むしり隊ボランティアを振り返ったコメントをいただきました。
=====
今回の企画の狙いには、ふだん青学生が通っている渋谷区にも、学生たちや若者が気付かないところで困っている人たちがいること。そして、目の前で困っている人の暮らしのために活動している人たちが地域には居ることを学生に知ってもらうことにありました。
草むしりボランティアと聞いてその作業部分だけを切り抜くと、ただの雑用のような印象を抱くかもしれません。しかし、その作業が必要とされる背景を考えたとき、地域に暮らす人たちの生活には大切な意味があり、それに取り組む人たちが不可欠なことに気付くことができます。
活動を終えて、学生からは「もっと沢山のボランティアに参加したい」「ささはた地域に貢献できる活動にこれからも参加したい」という声があがってきました。本活動から、ボランティア活動で得られるやりがいと出会いの楽しさに気付いた学生や、地域の取り組みを知り、地域とつながる機会になった学生もいたようです。
学生一人ひとりが活動で得た気付きをもとに、”自分自身にできることは何か”、”自分の身近にはどのような課題やニーズがあるか”など、地域の課題を自分事として捉え、学びを今後に活かしてもらえればと思っています。
あらためて、今回の活動を通してかかわった地域のみなさま、そしてTEN-SHIPアソシエーション戸所さんにこの場を借りて感謝申し上げます。ありがとうございました。
=====