2021年10月1日
【PICK UP! LOCAL ACTION】#09 子供服でつながる「リサイクるん」
「PICK UP! LOCAL ACTION」は、渋谷区内のユニークな地域活動を取材し紹介していく連載です。2021年6月の地域交流・地域活動強化月間は終了しましたが、事務局では引き続き、地域に根ざして活動し続ける人たちの取り組みを応援していきます。
今回取材したのは、渋谷区内で月に1回行われている「リサイクるん」という活動。今やさまざまなアプリやサービスを活用することで手軽に古着を手に入れることができますが、リサイクるんは、サイズアウトしてもまだ着られる子供服を、渋谷区内という地域で循環させています。ここが、今回紹介したいユニークなポイント。どうやら子供服のリユースのやりとりは、ママさん同士がつながる交流の場にもなっているようなのです。この活動の背景には、いったいどのような思いがあったのでしょうか。リサイクるんを主宰している、子育てサロンスイミーの住井さん、志間さんにお話を伺ってきました。
なりたてママさんの、心強い味方。
渋谷区内のとある駅から徒歩約10分。住宅街にあるガレージで、何やらフリーマーケットのようなものが行われています。ビニールシートに並べられているのは、55kgにも及ぶ、たくさんの子供服とおもちゃ。当日は8月の暑い日でしたが、並んでいるのは今年着られるような秋服、冬服が中心です。これらは、周辺の保育園に回収ボックスを置かせてもらうことで集めたもの。今回は感染防止対策の観点から参加者を制限し、9組の親子が来ることになっています。徒歩で、自転車で、ベビーカーで。それほど遠くない場所から、それぞれ集まりました。奥のおもちゃスペースで子供たち同士遊んだり、ベビーカーにのせたお子さんを見てもらったりしている間、ママさんたちは子供服を選んでいきます。
一人でじっくりと選んだり、住井さんや志間さんを通じ、他のママさんとおしゃべりをしながら選んだり。なかには、「息子さんが生まれる前に女の子の洋服をもらってしまってなかなか手放せなかったけれど、スイミーさんのところなら大切に使ってくれそうだから」と、満を辞して子供服を持ち込んだという方も。そしてその服が無事、娘さんのいるママさんの手に渡った、なんていう場面にも出会うことができました。お二人は初対面。でも、子供服という共通の話題や、住井さんや志間さんのお人柄によって、新たな交流が生まれることとなったのです。ほかにも、今回は参加者として来てみたけれど、「次は整理して子供服を持って来ます」という方も。
参加者の方にお話を聞いてみると「用事があるから行きやすい」とのこと。なりたてのママさんたちにとって、同じような悩みを抱える仲間を見つけるのは簡単なことではありません。子供服を持ち込んだり、持ち帰ったりすること以上に、その過程でのやりとりに、リサイクるんの活動の面白さがあるのだと思いました。
参加者から、主宰者に。仲間がどんどん増えていく。
(乳幼児用のロンパースは着る期間が短いので、きれいな状態のものがたくさんリユースされています。)
リサイクるんは、子育てサロンスイミーの活動の一環。子育てサロンでは、ほかにも託児付きヨガやベビーマッサージなどの活動を行っています。今回の参加者も、もともと子育てサロンに参加したことがあるという方がほとんどですが、最近では、リサイクるんから子育てサロンを知る、という方もいらっしゃるそう。それくらい、今では多くの人に知られるようになりました。
この活動が始まったのは、2011年から。代表の住井さん自身、お下がりをもらって着ることが多かったことがきっかけでした。またとくに子供服は、早くて2〜3ヶ月でサイズが変わってしまうもの。始めてみると、多くの人が同じように子供服の次の持ち主を探しているようで、たくさんの反響がありました。そしてそんな参加者の一人だったのが、志間さんでした。志間さんがスタッフとして加わり、リサイクるんの担当になってからは、続々と参加者が増え、ついには「渋谷サステナブル・アワード2020」の大賞にも選ばれるなど、社会的にも関心と評価が寄せられることにもなりました。また外出自粛期間中にも、一つひとつサイズを確認して仕分け撮影し、ホームページに掲載することで、活動を続けてきました。場合によっては、問い合わせのあったものを直接お届けすることも。
こうした丁寧な取り組みを続けて来たことで、今回も、55.5kgあった子供用品のうち、約半分の23.7kgがお持ち帰りいただけたようです。どれも状態が良く、きちんと洗濯してあるものが多いことは、この活動、そしてこのコミュニティの素晴らしさを物語っていると思いました。
今だからこそ、交流の機会を。
では、どうして住井さん、志間さんは10年間もこの活動を続けられているのだろう。活動を続けてきた思いについて、伺ってみました。
(左:子育てサロンスイミーの代表、住井美由紀さん 右:志間文さん)
ここまで熱心に活動していることについて志間さんは、率直に「古着が大好きだから」と教えてくれました。また、「渋谷サステナブル・アワード2020で大賞を受賞させていただいたのに、コロナ禍だからといって活動をやらないのは考えられなかった。むしろ、こういう時期だからこそ、私たちの活動を必要としている人がいるのではないか」ということをお話ししてくださいました。
さらに代表の住井さんは、子供服のリユースについて、「会話のきっかけになる」と教えてくれました。また「渋谷区という場所だからこそ、地元を離れて子育てをしている方もたくさんいて、ママさんの不安は大きい。ただ単に交流するのは難しいけれど、子供服という理由ができることで、交流しやすくなる」ということをお話ししてくださいました。リサイクるんで知り合った人とは、社会復帰をしてからもいまだに連絡をとっているというママさんも多いそう。それくらい、一緒に乗り越えたものが多いのだろうということが想像できました。
「今後はガレージだけでなく、区の施設にも活動の場を広げたい」と住井さん。活動の広がりと同時に、関わる人々がどんどん多くなり、子供服の管理や運搬などの仕事も増えていることで、もっともっと、この活動を多くの人に知ってもらいたいということを伝えてくれました。
ガレージを飛び出し、さまざまな場所で日常的にリサイクるんが行われるようになれば、おとなりさんのママさんに出会える機会も増えるはず。そうすれば、渋谷がもっともっと住みやすい街になるはずだと、思わずにはいられませんでした。
渋谷区には、まだ知られていない地域活動がたくさんあります。渋谷という地域のことを知りたい人も、おとなりサンデーが気になるという人も、引き続き「PICK UP! LOCAL ACTION」をぜひチェックしてみてください!
テキスト:家洞 李沙(Fan club)