ニュース

2021年4月12日

【PICK UP! LOCAL ACTION】#01 公園でラジオ体操

この連載は、渋谷区内のユニークな地域交流・地域活動を紹介していく企画です。渋谷には、おとなりサンデーの日だけにとどまらず、地域との関わりを持ちながら継続的に活動されている方がたくさんいます。そんな素晴らしい活動を、もっともっと多くの人に知ってもらいたい。そんな思いから、この連載が始まりました。

今回取材したのは、富ヶ谷を中心にさまざまな地域活動をされている中島珠子さん。その活動のひとつに、町内でのラジオ体操があります。驚くことに、この活動を始めてから約3ヶ月間、雨の日以外は毎日欠かさず開催しているそうです。取材当日もいつも通りラジオ体操をしていると聞き、取材陣も参加させてもらいました。ではさっそく、その様子からご紹介します!

10時。音楽が鳴ると、みんな自然と身体が動く。

4月某日。桜の花びらが舞う春らしい陽気のなか、私たちは富ヶ谷三本杉公園にやってきました。少し早めに着いたところ、男性陣がボールを投げ合いペタンクに闘志を燃やしています。その端の方には、すでに10名ほどの参加者が集まっており、お話に花を咲かせているようです。その後も、手押し車を使いながら、杖を使いながら、続々と参加者がやって来ます。皆さんお若く見えますが、この日の最高齢はなんと101歳!年齢を聞いてびっくりするほど元気な姿に、思わず感心してしまいました。

10時になると、中島さんは公園の真ん中にラジカセを置きます。それを囲むようにして輪ができてゆき、さっきまでペタンクをしていた方々も一緒になって体操を始めました。総勢、約20名。あの聞き馴染みのある音楽が鳴ると、参加するつもりがなかった人たちも、自然と身体が動きます。それにしても、どれも簡単な動きのはずなのに、意外ときつい(私が最年少に見えますが)。一方で、皆さんは途中で体操を止めることもなく、スムーズに身体を動かしています。その様子から、毎日継続されていることが伝わってきました。


(新緑が心地よく、お散歩日和。体が温まり、上着を脱いでいる人も。)

10分間のラジオ体操が終わると、ペタンクを再開する人、お話の続きをする人、その日の用事に向かう人とそれぞれの日常に戻っていきます。ラジオ体操後にお散歩するのは恒例となっていて、この日は数名で出かけることになりました。参加するもしないも自由、途中まででもOKというゆるさが、中島さんの活動の魅力のひとつ。お散歩のルートは毎回さまざまですが、「渋谷区役所の手打ち蕎麦が美味しいらしいの。今度はお蕎麦を食べて帰りたいね」と盛り上がる場面もありました。こうしたイベント性が、身体を動かす良いきっかけになっているようです。

外出自粛によって、困っている人たちがいる。

中島さんがこの活動を始めたのは、二回目の緊急事態宣言が発令された20211月から。きっかけは、仲の良いご高齢の方からの「ずっと家にいたら、すっかり歩けなくなってしまった」という相談の電話でした。「以前から、外出自粛が高齢者の筋力低下や認知機能低下を引き起こすのではないかと不安を感じていた」中島さん。さっそく地域の民生委員とともに「歩こう会」を結成し、さらにたくさん歩けない人のために、ラジオ体操を実施することにしたのです。

始めてみると、どこから聞きつけたのか、たくさんの人が集まりました。青空の下、適度な距離を保っているので、感染防止対策は十分。「身体を動かすことは、決して不要ではないはず」。中島さんの思いは、近所の多くの人に伝わりました。「ラジオ体操ができなくても、公園に来ておしゃべりをするだけでもいいんです。外へ出るだけでも十分な運動になりますから」。週末には、先に遊んでいた子ども連れの家族がラジオ体操に参加してくれることもあり、健康のために始めた活動が、今では多世代交流の場になりました。

わたしの居場所が、地域の居場所に。

中島さんは長年、看護師の仕事をされてきました。そして現在は「渋谷区オレンジカフェ」や「暮らしの保健室」を中心に、高齢者福祉のボランティア活動をされています。ラジオ体操や歩こう会も、こうした活動の延長線上にあります。


(ご自身でお手入れしている町内のバラ園。本を読んだり絵を描いたり、憩いの場になっています。)

どうしてここまで、地域のために活動できるのだろう。そんな疑問を投げかけてみると「ナイチンゲール精神よ」と笑って答える中島さん。さまざまな活動の根っこにはいつも、困っている人の存在があるようです。そして目の前の人たちを思って始めたアクションの輪が少しずつ広がり、気づくと地域にたくさんの居場所ができていました。

ちなみに、一昨年のおとなりサンデーの日にはバラ園の草むしりの予定を入れたそうです。特別なことではないけれど、ご近所の方と飲み物と食べ物を持ち寄れば、そこが交流の場になりました。中島さんの活動には、長年の経験と思い、そして地域とのつながりが凝縮されています。なかなか真似できるものではありませんが、身近な人と一緒に何かをすることなら、誰にでもできそう。中島さんは「何でもおとなりサンデーよ」と教えてくれました。

 

渋谷区には、まだ知られていない地域活動がたくさんあります。渋谷という町のことを知りたい人も、おとなりサンデーで何か企画したい人も、引き続き「PICK UP LOCAL ACTION」をぜひチェックしてみてください!

※撮影時のみマスクを外していただきました。

テキスト:家洞 李沙(Fan club